するとまたアダッヂオは眩しそうに空を仰ぐと呟いた。

「神のテクニックを目の当たりにすると、俺の創作意欲が刺激されるんだ」

「アダッヂオは絵を描くのが好きなの? 随分発言がアーティスティックだけど」

目を閉じたまま思いを馳せているゴブリンは小さく頷く。

「可奈子、俺はこんな風になる前は絵描きだったみたいなんだ。大昔の話だから、殆ど覚えてないんだがな」

「ふうん、じゃあアダッヂオは人間だったのね」

可奈子もゴブリンの脇に腰を降ろし、その頃の景色を思い浮かべるように瞳を閉じた。

「ああ、見えてくるようね。青い空、色とりどりの野菜や果物。人の良さそうな店主のおじさんが、パイプを燻らせながらハムを切り売りしてる」


< 73 / 199 >

この作品をシェア

pagetop