その頃可奈子は。

「そんなことも出来るの? アダッヂオはお医者様だったのかしら」

ひょんなことから膝を擦りむいてしまった可奈子。その手当てを手際よく済ませたゴブリンに彼女は言う。

「いや、可奈子。どうやら俺は川を塞き止めたりする土木工事をやっていた……」

「そんな武骨な肉体労働もしていたの? 絵を描いたり、傷の治療をしたり。もっと繊細な感じなのかと思った」

可奈子は普段から丸くて大きなその瞳を、更に開いて言う。

「その人夫たちを監督していたみたいだ。ああ、自分でも訳が解らない」

灰色の肌をしたゴブリンは同じく灰色の眉間に皺を寄せた。


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