「お疲れ様です。どうかしたんですか?」

「おおアンちゃん。ほら、見栄えのいい廃材が出たから使えよ」


 2人が運んでくれていたのは、俺の『ニュー御殿』に使う材料だった。

昨日もそうだが、そろそろブルーシートの住まいには限界を感じていた所だったのだ。


「わざわざすいません、山野内さん。言って貰えれば俺が運んだのに」

「俺達も今日はこれで終わりだから気にすんなよ、な」

「そうさぁ。早上がりで飲み屋直行さぁ」


 分け前の一万円とスクラップ屋の伝票を渡すと「おっ、今日もいい仕事したねっ」と大城くん。

 今日飲むって事は、恐らく明日は彼に会えない。飲んだ次の日は必ず仕事を休むのが恒例になっているから。


「おん爺が元気になったのもアンちゃんのお陰だからな。あのジジイが暗いと仕事がやり辛くて」


 てきぱきと材料を運び終えると「失敗して無駄になったとか言うなよ? がははは」と豪快に笑って彼等は帰って行った。

 これで家を作れば、昨日みたいな事にはならずに快適な睡眠が摂れる。


「おお、断熱材迄有るじゃないか! こりゃいい御殿が作れそうだな」


 俺はその充分過ぎる材料を目の前にして『ニュー御殿』の設計に思いを巡らせていた。


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