「だった? ではご尊父は……」

「ええ、過労が祟って心筋梗塞に。でもその時は発見が早かったから、死なずに済んだ。皮肉にも父が工場を始めてから初めての長期休暇になったわ」

「ではご健在なのか? いや、続けてくれ」

ゴブリンは戸惑いながらも可奈子の言葉を待った。

「それまでずっと寡黙に働き続けて来た父と、家族とのふれ合いの時間だったわ。

姉達も、私も、そして母も。本当に愛されていたんだと、父から直接聞くことが出来た」

ゴブリンは黙って頷いている。

「そして二回目の発作では、父が命を繋ぐことは出来なかったの」

「それは……残念だったな」

レオナルドはそう言うと、可奈子の肩に手をそっと置いた。


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