「私はサライと背格好の似ている少年を拐って、そのまま解剖してしまったんだ」

「なんですって?!」

レオナルドに掴み掛かりそうになりながら可奈子が叫んだ。

「サライの美を表現するには、少年の解剖所見が不可欠だと思い込んでしまっていた。その……その少年の名が……アダッヂオだったんだ」

彼は死後、神から己が手に掛けた少年の名前を付けられ、その万能の翼をもがれて、花を咲かす能力しかないゴブリンへと姿を変えられてしまったのだという。

「神罰が下されたのだ。私は気の遠くなるような長い期間、自らの無能を恥じ、力の無さを呪いながら生かされて来た。

サライの美を画面に表したいという欲求の為だけに、罪も無い少年を殺めた代償として……」

俺達は言葉も無く、ただ彼の言葉を聞いていた。


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