宝石箱〜私達の宝物〜《短》
半年に一度の夜
「では! 半年に一度の夜を記念して!」
「かんぱーい!」
カウンターと座敷が二つしかないこの小さな居酒屋で、私達は貴重な座敷席を一つ占領してグラスをぶつけた。
そのままジョッキに口を付けると、ビールが仕事終わりの体に染み込んでいく。
紅茶や珈琲も好きだけど、この感覚もやっぱり好きだな。
と、口のまわりについているであろう泡を指で拭いながら思った。
それにしても……相変わらず不思議な店だな、と見慣れた店内を見回す。
私達が生まれた年にオープンしたらしい居酒屋の店内には、意味のわからない置物や年代を感じさせるポスターがはってある。
そして座敷に置かれているテーブルは、なぜか丸いちゃぶ台だ。
だけどその不思議さに首を傾げながらも、変わらないこの空間に私は心が安らいでいくのを感じた。
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