宝石箱〜私達の宝物〜《短》
やっぱりオイチャンには敵わないな。
顔の火照りが治まった後、私はそう思いながら小さく笑った。
……オイチャンと私達の交流が始まったのは、小学五年生の頃。
オイチャンは誰かの父親でもなければ、親戚のおじさんでもない。
そんな全くの他人であるオイチャンと私達が最初に出会ったのは、皆で下校中にユッケが転んで泣いてしまったときだった。
ユッケは足を捻ってしまって立てないし、私達はランドセルを背負ってるからおんぶしてあげることも出来ない。
今考えれば誰かがランドセルを二つ持って、誰かがユッケをおんぶすればいいのだろうけれど、パニックに陥った小学五年生の私達にはそんな手段は思いも付かなかった。
そんなどうしていいかわからず泣きそうになっていた私達を助けてくれたのが、たまたま通りかかったオイチャンだった。