宝石箱〜私達の宝物〜《短》
「やっぱ一杯目は生ビールだよな!」
ぼーっとしていた私はその大きな声に、ビクッと肩を揺らしてしまった。
隣を見るとほとんど空になっているジョッキを片手に持ったハチが満足そうな、それでいて意地悪な笑みを浮かべていた。
生ビールと旅行が大好きなハチ。
ハチは盛り上げ役で、昔からバカなことをしては皆を笑わせていた。
そんなハチが人気の旅作家になるだなんて、誰も想像していなかっただろう。
だけどハチの文章には読んだ人を明るくさせる力がある。
作家はハチにとって間違いなく天職だと、私はハチの本を読む度に思っていた。