宝石箱〜私達の宝物〜《短》
「ねえタロ? このバカむかつくよね?」
「いや……俺は別に……」
ユッケがわざわざ場所を移動して、タロの肩をバシバシと叩く。
タロは痛そうに顔をしかめたけれどユッケを軽く流し、大好きな梅酒ロックに口をつける。
その表情はとても幸せそうに見えた。
タロは昔から皆が騒いでいても、一人でボーッとしているような男の子だった。
そんな性格だから“何を考えているのかわからない”とか“冷たそう”だとか誤解されてしまう事もあるけれど。
タロはただ、自分に正直なだけだ。
そんなタロがスカウトされてホストになり、No.1になったと聞いた時は本当に驚いた。
確かに綺麗な顔をしているけれど……私の中でホストという職業は、人を騙すというイメージがあったから。
そんな疑問をタロにぶつけた当時の私は、タロの返答に大笑いしてしまった。
『騙すとか面倒臭い』
この言葉は数年経った今でも一番タロらしい言葉として私の中にインプットされている。