宝石箱〜私達の宝物〜《短》

「おい、ユッケ。タロに近づきすぎだ」

シンチがタバコの煙を吐きながら、拗ねたような顔でユッケを見た。

シンチとユッケは中学生のときから付き合ってる仲良しカップルだ。

私は早く結婚すればいいのにな、と二人を見る度に思っている。


シンチはとにかく優しい。
だけど、心が強い人だ。

ユッケが高校には行かず専門学校に行くと言い出したとき、私はシンチにユッケをとめないのかと聞いた。

『ユッケは絶対に諦めないし成功するよ。だけどもし途中で挫折したら、俺が責任とるよ』

するとシンチは私に柔らかくそう笑った。


このときのシンチは誰よりも強く、かっこよく私には見えた。

だから……ユッケが羨ましいな、と思ってしまったことは、私だけの秘密だ。

そしてシンチはその言葉通り責任がとれるよう高校を卒業してすぐに実家の酒屋を継ぎ、今では酒屋の店主として毎日頑張っている。
< 5 / 35 >

この作品をシェア

pagetop