呪業―じゅぎょう
男が来てから何分経ったのだろう…?

知らない間に一限目が終わっていた。

男は奥村の遺体をゴミ袋に入れ、「次のチャイムがなるまで休憩だ」と教室を出て行った。

その瞬間、洋子が震える声でみんなに問い掛けた。

「ねぇ…あたし達…どうなるのかな…?次の授業ってあいつがするんでしょ?普通の…授業だよね…?」

今にも泣きそうな洋子…

「なぁ…携帯隠し持ってるやつとかいねぇのか!?いたら俺に貸せ!!」

俊彦が立ち上がり、全員に手を差し出す。

「そんなのいるわけないじゃん…!バレたら殺されるかもしれないんだよ…!?」

目にいっぱい涙を溜めた洋子が言い返す。

「洋子は黙ってろ!!おい!!誰も持ってねぇのか!?答えろよ!!」

ガコンッ―――

何も言わない皆に、ついに俊彦がキレ出し、机を蹴った。

「いい加減にしろよ!?皆ビビってんじゃねぇか!!」

俺は俊彦の行動に腹を立て、俊彦を怒鳴る。

それに皆はビクッとし、臆病な川上が静かに手を挙げた。

「あ、あの…」

震える声で川上は学ランの裾から、ゆっくりと携帯を取出した。

それを見て一斉に皆はざわめき始めた。
それもそうだろう…。
誰もが死ぬのを恐れて、携帯を隠し持ってる奴なんかいないと思っていた。
それに、一番ビビリな川上が持っているなんて誰も予想していなかっただろう…

俊彦は、川上に断りも入れず、「貸せ!!」と携帯を奪い取った。
そして迷わず、何処かに電話を掛け始める。

プルルル

ガチャ

『は~い』

受話器から男の人の声が漏れる。聞き覚えのある声…
さっき聞いたばかりの様な…そんな声…。

「だ、誰だよ…!?」

声を聞いて何故か俊彦は焦っていた。

誰に掛けたのだろうか?

そして再び受話器から声が聞こえた。

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