翡翠の帯留
「65年ぶりよ」
和子伯母さんが、
指折り数えて言った。

「お帰り、
瑠璃子お母さん」

そう言って、
手を合わせる。

「あの世で、
お父さんを
取り合わないでよ。
家のお母さんは、
偏屈で金の亡者だけど、
それでも、
お父さんのことは、
好きだったと思うし」

「親爺、もてもてだ」

お父さんは笑った。
だけど、少し、
声が震えていた。
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