W・ブラッティⅡ
 ベッドは入り口から見て左側を麻耶と玲菜。右側を慎次と良太が使うことになった。各自の荷物をベッドに置く。


 出発十五分前。部屋のドアがノックされる。ノックしたのは車掌だった。


「すいません。念のため乗車券を確認します」


 そう言うと玲菜が四人分の乗車券を車掌に手渡す。車掌は一枚ずつチェックして、


「はい。ご協力ありがとうございました。それでは良い旅を」


 そう言って深くお辞儀をして部屋を後にした。


「結構徹底しているのね。びっくりしちゃった」


「最近、公共交通手段を使ったテロやジャックが後を絶たないからね。向こうも被害を出さないよう躍起になっているのさ」


 つい最近起きた爆破テロ。渋谷の真ん中で死傷者千五百人を出した爆破テが起きて以降ロ日本政府も警戒している。起きからでは遅い。だから面倒でも未然に防ぐしかない。それが今出来る予防策なのだ。


 良太が会見を開いた際も『血の起爆』について質問が飛び交った。『これはどうする気ですか?』『アメリカ軍やイギリス軍などの軍部もこのメカニズムに興味があるとか』
良太は全てに関してこう答えた。


「全てのプログラムを消去・処分をした」と。


 これで事件は終わったと胸をなでおろすのも束の間、今度は鉄斎の遺産相続問題が慎次を悩ます。『一カ月以内に四枚の紙を集めろ』。まるで鉄斎が死ぬことを予想できたと言わんばかりの展開の早さだった。


 果たして慎次の、悠介の兄妹とはどんな人間なのだろうか。慎次の胸にはそのことだけが引っ掛かってしょうがなかった。


「どうしたの?少し顔色が良くないけど?」


 麻耶が慎次の顔を覗き込む。可愛らしい顔だちをした少女が目の前にいる。


 慎次は驚いて目を大きくさせる。


「だっ大丈夫だよ!少し乗り物酔いしないか心配だっただけ」


「そう。でもあんまり考えすぎると本当に酔っちゃうよ?『病は気から』って言うでしょ?せっかくの旅行なんだから楽しまないと!」


 麻耶は笑顔で慎次を見る。その表情は年相応の少女というより子供のような満面の笑顔だった。
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