W・ブラッティⅡ
「うん。そうだね。少し列車の全体を見てくるよ」
「外に出るときは時間に注意してね」
分かった。慎次は頷いて部屋を出た。
――どうなんだ?
部屋を出た途端、舌足らずな口調で悠介が慎次に問いかけてくる。
「何がどうなの?」
――遺産だよ。お前にはどうでもよさそうな返事だが、もしかしたら……
悠介が少しだけためらった。何か言いたくなそうな、それとも別の何かが引っ掛かるのか。
慎次が少しだけ急かすと、
――もしかしたら、その遺産ってやつは簡単に世界のバランスをひっくりかえせる代物なんじゃないか?多額の金銭などじゃなく。
「例えばどんなもの?」
――その中でも考えられるのは軍事兵器、もしくはそれに準ずるもの。これが一番しっくりくるんだ。
「軍事兵器だなんて……。それに鉄斎は科学者だよ?」
――戦時中、兵器を考えるのは軍人の仕事だが作って試すのはあいつのような人間だ。逆だけどノーベルがいい例だろ?あいつはこう言っていた。『研究者は自分の考えた理論をどうしても試したい』。鉄斎が実践を出来ずに死んだものが遺産として回ってきたら?
――それが俺の考えすぎならそれでいいが、もし当たったらどうなる?この前の『血の起爆』クラスのヤバい技術がてんこ盛りの遺産を見て見ぬふり出来るか?そして俺ら以外の三人の『遺産相続候補』の中でろくでもない人間が手にしたら?最悪、遺産を使った兵器で戦争を起こすかも知れん。俺たちはそれ何としても止めないといけない。この前のように良太に頼んで完全に抹殺しないとその脅威は消えない。
「で、でもそれなら取引をすれば……」
――それは却下だ。今回の『相続候補』の四人で比較的立場が強いのは妹の沙希と沙弥だ。歳から見て二人は双子の可能性が高い。俺たちが取引をする側ではなく、される側だ。もちろん遺産の破棄に準ずる行為は受け入れてもらえるわけがない。
「そうか、話し合いでどうにかなることは出来ないか……」
――少なくともそれは最悪の場合だ。それこそ金銭や土地であればそんな考えはいらない。だが、あくまでも可能性として頭の片隅に置いておいてくれ。
慎次は力なく頷いた。
「外に出るときは時間に注意してね」
分かった。慎次は頷いて部屋を出た。
――どうなんだ?
部屋を出た途端、舌足らずな口調で悠介が慎次に問いかけてくる。
「何がどうなの?」
――遺産だよ。お前にはどうでもよさそうな返事だが、もしかしたら……
悠介が少しだけためらった。何か言いたくなそうな、それとも別の何かが引っ掛かるのか。
慎次が少しだけ急かすと、
――もしかしたら、その遺産ってやつは簡単に世界のバランスをひっくりかえせる代物なんじゃないか?多額の金銭などじゃなく。
「例えばどんなもの?」
――その中でも考えられるのは軍事兵器、もしくはそれに準ずるもの。これが一番しっくりくるんだ。
「軍事兵器だなんて……。それに鉄斎は科学者だよ?」
――戦時中、兵器を考えるのは軍人の仕事だが作って試すのはあいつのような人間だ。逆だけどノーベルがいい例だろ?あいつはこう言っていた。『研究者は自分の考えた理論をどうしても試したい』。鉄斎が実践を出来ずに死んだものが遺産として回ってきたら?
――それが俺の考えすぎならそれでいいが、もし当たったらどうなる?この前の『血の起爆』クラスのヤバい技術がてんこ盛りの遺産を見て見ぬふり出来るか?そして俺ら以外の三人の『遺産相続候補』の中でろくでもない人間が手にしたら?最悪、遺産を使った兵器で戦争を起こすかも知れん。俺たちはそれ何としても止めないといけない。この前のように良太に頼んで完全に抹殺しないとその脅威は消えない。
「で、でもそれなら取引をすれば……」
――それは却下だ。今回の『相続候補』の四人で比較的立場が強いのは妹の沙希と沙弥だ。歳から見て二人は双子の可能性が高い。俺たちが取引をする側ではなく、される側だ。もちろん遺産の破棄に準ずる行為は受け入れてもらえるわけがない。
「そうか、話し合いでどうにかなることは出来ないか……」
――少なくともそれは最悪の場合だ。それこそ金銭や土地であればそんな考えはいらない。だが、あくまでも可能性として頭の片隅に置いておいてくれ。
慎次は力なく頷いた。