W・ブラッティⅡ
「商店街の抽選会なんてねえ……」


 新城麻耶がため息をつく。玲菜が夕飯の材料で買い忘れた物があったついでに抽選の整理券があるからやっておいで。と。


「まあ、適当にやっていけばいいんじゃない?七等のティッシュくらいで勘弁してもらおう」


 慎次が気楽に話す。その反面、麻耶は溜め息をついてばかり。高校生にもなって商店街の抽選でわくわくする人がどこにいるのか。麻耶は道中ため息ばかりつく。


 商店街の抽選の目玉、『四名様で行く!北海道三泊四日!蜃気楼奇術団鑑賞ツアー!』がまだ残っていた。


 蜃気楼奇術団は北海道を活動拠点とした今一番人気の高い五人組のマジシャン。リーダーの佐竹宏史を中心とした楽しいトークを交えつつ行うマジックは観衆も参加できるということで今最も人気あるマジックチーム。今回の北海道から始まるツアーは彼らのとって初めての全国ということもあり注目されている。


 玲菜はテレビのワイドショーを見て、一度でいいから見に行きたい。と言っており普段は買いに行かない商店街で毎日のように買い物をしていたらしい。全ては蜃気楼奇術団のために。


 麻耶は整理券と抽選権を係員に渡す。全部で七回引いていいと言われ、慎次と顔を見合す。


 麻耶が三回引いた。六等、七等、七等。


 慎次が残りの四回引くことに。五等、七等、七等、
係員があと一回だよ。と言われて慎次が周りを見る。さっきから誰かに見られているような気がする。


 少しだけ首を傾げて、慎次が何気なしに抽選機を回す。そして出てきた玉は金色。さっきまでの六回の玉とは輝きが違う。


「大当たり!一等の蜃気楼奇術団鑑賞ツアーです!」


 係員が鐘をこれでもかと鳴らすため、通行人が足を止めて慎次たちの顔を見ている。後ろの方では抽選するのをやめるか話をしているおばさん達。


「はい!おめでとうございます!出発日は来週の木曜から四日間です。楽しんできてくださいね!」


 慎次は苦笑しつつも招待券を受け取った。周りからは盛大な拍手が慎次たちを包んだ。
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