W・ブラッティⅡ
 その悠介が抱いた疑問だ。無下に扱えるわけがない。頭の片隅どころか脳全域にまでそのことが刻まれた感じがした。


 慎次が通路の窓を前にして思案顔していると、足もとに何かが当たった――テニスボールほどの大きさをした柔らかいゴムボールだ。


 慎次は急に現実に引き戻され少し挙動不審気味になった。もしや考えていたことが口に出てしまったかと顔を赤くした。


「すいません。ここにボールが来ませんでしたか?」


 ボールの主であろう少女が慎次のもとに訪ねてきた。慎次が頷いて少女と同じ目線に立ってびっくりした。


 なんて可愛らしいのだろう。年は十代の前半くらい。慎次には幼女趣味は一切ないはずだがそれでも少女の可愛らしさには慎次も思わず喉を鳴らした。


 黒いジャンパースカートに黒い髪をまっすぐ腰まで伸ばし、頭には赤いリボンカチューシャ。黒い宝石のように輝いた瞳は本物の人形のような整った顔つきだった。麻耶よりもさらに上を行くのではないかと思った。
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