W・ブラッティⅡ
「あんたがこいつらの兄ちゃんか?」


 威圧的な態度でこちらに寄ってくる。慎次は反射的に後ろに下がる。しかしすぐに壁にぶつかって逃げ場がなくなった。


「どう落とし前付ける気だ?兄ちゃん?こいつら貰って行っていいかい?」


 カトリカの腕を強く引っ張る男。嫌がって叫ぼうとするカトリカの口を男が封じた。怯えているカトリカの瞳が怖さを物語っている。


 どうにかしなくちゃ。慎次の足が震えて力が出ない。


「ちょっと大人しくしててね。おじさんの部屋で遊ぼうね」


「おい。いい加減にしやがれ」


 男が声のした方を睨む。声を出したのは今の今まで怯えていた少年。慎次だった少年はもう一人の人格の聖悠介に変わっていたが、男はそれを知る由もない。


 男は舌打ちをして、悠介に詰めより胸倉を掴む。


「おい。今俺に言ったのか?そうなのか?」


 男は悠介に向けて右ストレートを放つ。しかし自慢の右ストレートを悠介の顔面ぎりぎりで左手が止めた。男の眉がさらに釣り上る。


「子供相手に随分してくれるじゃねえか。子供のミスは笑って済ませろって!」


 後半叫ぶように、今度は悠介の反撃の右ストレートは先程繰り出した男のそれとは早さも重さも違った。


「があっ!」


 男は顔面にストレートを受けて床に伏した。その呻き声を聞きつけて車掌が駆けつけて悠介に事情を求めたが、エクレシア達が代わって説明をした。


「なるほどね。この人はこちらで対応するから君たちは戻っていいよ。それにお譲ちゃん達」


 そう言って車掌はエクレシア達を見て、


「ここで鬼ごっこはやっちゃダメだよ。ここはみんなが使う場所だから、遊びには使わないでね」
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