W・ブラッティⅡ

2

「あの男が悠介お兄様で間違いなさそうね。カトリカ」


「そうですね。先程豹変したときに感じた殺気・威圧感が博文お兄様のそれに似ていました」


 カトリカの報告を聞くとエクレシアは先程まで慎次に見せた笑顔とはまったく違う性質の笑顔を見せる。不気味に笑う姿は十代そこそこの子どもには見えない。


「これからどうします?私たちがどちらかを先に倒しますか?」


 カトリカの意見に少し悩んでエクレシアが首を横に振った。


「悠介お兄様は札幌でマジックのショーを見に行くと言っておりました。もしかするとそこで博文お兄様と接触する可能性があります。それまで少し泳がせましょう。取引をかけるにしても、実力行使に出るとしても有利なのは二人いる私たちですからね」


 エクレシアの考えにカトリカは感嘆した。


「すごいですわ。さすがエクレシアお姉様です。そこまで考えているなんて……」


 エクレシアは嬉しかったのか長い金の髪を手でかき上げて見せた。真っ直ぐに伸びた髪は綺麗なカールを描く。


「さて、ここから私たち姉妹は見をはらせてもらいますか。お二人がどう出るか非常に楽しみですわ」


 誰も歩かない車内の廊下で美少女の二人は誰に向けるでもない不敵な笑顔を見せた。


 強いて言うなら、これから遺産の争いを行うであろう二人の兄に。
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