W・ブラッティⅡ
 最近慎次が隠し事をしている気がする。


 慎次のお姉さん的な存在である新城麻耶が率直に思ったことだ。彼は元々悩みを他に人に打ち明ける方ではないが、この前の『血の起爆』の件から急激に塞ぎ込むような素っ気ない言葉が慎次の口から聞こえてきた。


 なんでもない、放っておいてくれる?などやはり年頃だろうか。それとも麻耶が少しだけ過保護なのか。


 先程の電話の時もそうだ。慎次は何か隠し事をしている。何もなければ即答で返ってくるはずの答えが少しだけ遅かった。


 悠介がいるから?否、それはない。


 悠介がいれば逆に麻耶のところにも相談を持ちかけてくるはずだ。悠介はそんな人物だ。自分に分からない問題が出ればすかさず他人に相談をしてくる。それが彼、悠介だ。


 今は玲菜も良介も部屋にはいない。部屋には自分しかいない。だからちゃんとした答えが出るまで徹底的に慎次に問うてみよう。そう思って連絡した。


 慎次がどういうつもりで隠し事をするのか分からない。でも彼のことだ。今もその問題で悩んでいるはずだ。でも、


 本当にそれでいいのだろうか?人間には隠しておきたいことの一つや二つはあってもいいべきだ。それを無理やり聞いていいものだろうか?


 麻耶は自分のベッドで仰向けになって寝ている。上に見えるのは真っ白い天井だけだ。麻耶はその天井に向かって真っ白な手を伸ばした。二等客室といえども仰向けになっている麻耶が腕を伸ばしても天井には届かない。
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