W・ブラッティⅡ
 全てが完璧な聖悠介と博文の情報。それに聖家のセキュリティのことを鑑みれば多少の増額はやむを得ない。


「それで、あなたはいくらほどの増額を希望していますか?それだけは聞いておきましょう」


「一千三百万増額の二千万だ」


 男のにやりと笑った顔が二人の顔を引きつらせた。それは図々しさからくるものではなく、生理的な嫌悪であった。


「無理です。こちらの条件は三百万増額の一千万。これが最大限の譲歩です」


 すでに会話の内容が十二歳の女の子が話す内容ではない。男が不機嫌さを隠さず大きな舌打ちをして、


「随分と舐められたもんだな」


「ええ。こちらもです。あなたは依頼主がどんな人と聞いているのですか?」


 男があの笑顔を浮かべる。二人はお互いの腕を掴んでいる。まるでカエルを怖がる子供のように。


「そりゃ。天下の聖家の次期後継ぎ候補だと聞いている。今のうちに恩を売っておきたかったが、まさかこんなお子様が『次期後継ぎ』とは驚いたよ」


「まさか、私たちが子供だと分かった上での要求ということですね?」


「そうだよ。」


 そこまで言われて一層男を睨む目が強くなる。そこで話を出したのは今まで黙ってきたエクレシアだった。


「行ったはずですよ。『私たちを侮ってくれるな』と。あなたはその忠告を聞いていましたか?」


「ああ。ちゃんと聞いてたよ。『今回依頼を受けるのは聖の後継ぎだ。変な真似をすれば命の保証はない』と聞いていたが」


 そこで話を止めて、エクレシア達をいやらしい目つきで見てくる。顔を見、体を見、そしてもう一度顔を見て、
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