W・ブラッティⅡ
全ての弾を撃ち尽くした時点でどちらが優勢かは一目で分かる。


 相手を見下し勝利を確信するエクレシア。


 頼みの銃も彼女に難なく避けられ打つ手の無くした男の顔には悲壮感が漂っていた。


 エクレシアが右腕から滑り降ろしたナイフを握る。刃の長さは十五センチほどの銀製。柄や鍔の部分には豪華な飾りが作られている。


 月の光によって輝く刀身は鋭く光る。


 男はその輝きを見て、絶望に顔を歪ませる。腰は砕け、足は震え、体中から吹き出る脂汗。最早、先程までの男とは完全に別物だ。


「さあ。我々を侮ったことどうなるか思い知らせてあげますわ」


 ナイフを一度顔の近くに寄せた後、空気を斬るような鋭いひと振りを見せ男の胸元へ音もなく刺した。


 男の見た最後の光景は、赤いリボンカチューシャを付けた女の子が全く見えないひと振りを見せた後姿を消して、現れた時には既に視点が上を向いてしまい、黒い闇に消えてしまった。


「まったくお見事な手腕でしたわ。エクレシアお姉さま」


 褒め称えるカトリカをよそに、エクレシアは服にべっとりと付着した男の血痕に悪戦苦闘していた。


「もう!しつこいわ!しつこいのは生きている時だけにして欲しいわ」


 しょうがないので指を鳴らして使用人を呼んでシャワーを浴びるから使えるように準備をするように命じる。ついでにこの男の処理も頼んだ。使用人は一礼をして部屋を後にした。


 男の死体を速やかに部屋から追い出し、エクレシアの使ったナイフもそのうちの一人に渡して綺麗にするように命じた。


「やはり、鉄斎お爺様の技術は素晴らしいものですね。銃撃をぎりぎりでかわせる人間はそういませんわ」


「ええ。だからこそ亡くなったお爺様の技術は私たちが有効に使わせてもらいます」


 二人は煌々と周囲を照らす月を窓から眺めていた。全てはわが手に。そう心から誓うエクレシアとカトリカだった。
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