W・ブラッティⅡ

3

 土曜日の午前八時。


 慎次はゆっくりとベッドの上で体を起こした。目が重くまだ眠っていたい。
昨日早くに寝たはずなのにまだ眠い。やはり高級ベッドは慎次の肌には合わなかったみたいだ。


 ゆったりとした足取りで部屋の中央にあるテレビの部屋に向かう。すでに三人が着替え終わり臨戦態勢だった。その中でも麻耶は不機嫌な顔をしている。


「ちょっと慎次!早く着替えてよ。朝ごはんに間に合わなくなるよ」


「あっ……」


 すっかり忘れていたのを麻耶のこの一言ですべて思い出した。


 このホテルの朝食は鮮度維持のため八時半になると入場が禁止されると、昨日の夜麻耶が言っていた。時計を見るとすでに八時と二分を回っている。


 慎次はすぐに自分のベッドに戻り、バッグから着替えを取り出してすぐに身だしなみを整える。


 約三分足らずですべてを終わらせた。全ては朝食のために。


 しかし、帰ってきた答えは虚しいものだった。


「そんなわけないじゃん。慎次がいつまでも寝ているからちょっとだけ嘘をついたのよ」


 慎次は大きなため息をついた。安堵と少し怒りが混ざったため息。ちょっとだけ麻耶の方を見たが麻耶は気付かない振りをしている。


 朝食の会場はホテルの地下にある。これだけの高級ホテルだ。朝食の会場も豪華に違いない。慎次の考えは当たっていたが予想をはるかに超えていた。


 入口には、従業員が立っており宿泊客と分かると恭しく礼をし、扉を開ける。


 そこは体育館ほどの広さと高さを持ったホールと言える場所だった。中には百人くらいの宿泊客がテーブルで楽しく談笑しながら朝食を食べていたり、ビュッフェスタイルの朝食で何を食べようか迷っている人の列が見える。
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