W・ブラッティⅡ
 慎次たちの札幌探索はあっという間に予定の五時になりつつあった。


 絵葉書によく出る札幌の時計台。全国の人気ローカル番組をやっているテレビ局。最近東京から移転してきたプロ野球チーム。


 すっかり満喫した一行の両手一杯にお土産の紙袋が満載。食べ物からその場のノリで買った置物まで多種多様。


「これだけ買えば優が好きそうなお土産あるよね?」


「そうね。少し使えなそうな微妙な物でもあげると喜ぶかもね」


「微妙なものって……」


 慎次たちは東京で今日も退屈な学校の授業を聞いている親友のことを少しだけ思った。多分今頃退屈な授業だったと一人で愚痴をこぼしながら家路に向かっているだろう。


 いつもは愚痴の相手は慎次が受け持っているが、ここ三日間慎次がいないためさぞかし不満が溜まっている頃だろう。帰ってきたらしっかり彼の愚痴を聞いてあげよう。


 慎次はそう思いながらホテルに戻って行った。
時間は午後四時半。ホテルの一階にあるロビーには蜃気楼奇術団のマジックショーを楽しみにしている人たちが首を長くして待っている。


一行は急いでフロントから鍵を貰ってすぐに荷物と着替えを行った。


男たちは決まってスーツ姿。慎次は慣れない正装に少し戸惑っていた。少し長めのスーツとスラックス。腕を下に伸ばすと手がほとんど隠れてしまう。スラックスに至っては完全に伸ばすと靴が全く見えない。まるで背伸びしようとした子供が父親のスーツを着ているようだった。
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