W・ブラッティⅡ
4
『話によれば今日の公演で来るらしいわ。悠介お兄様が』
楽屋で佐竹が電話で話している。電話の相手はエクレシア――沙希であった。
それは本番開始三時間前のこと。最終のリハーサルをステージ上で終えた蜃気楼奇術団は各自の楽屋に戻って三十分前まで自由行動していた。
佐竹も一人だけの楽屋で机に置かれてあった週刊誌を手にとって眺めていたところ、着信が来た。画面には知らない電話番号。それでも電話を受け取るのは彼なりの礼儀だ。
『もしもし。博文お兄様ですか?』
その声を聞いた途端、佐竹の眉間のしわと表情が一気に厳しくなった。
相手は近いうち必ず相見えるはずの遺産の相続相手。聖沙希だった。
「何の用だ?それになんで俺の携帯の番号を知っている?」
佐竹は周囲をきょろきょろ見回して、小さな声でしゃべる。他のメンバーやスタッフに気取られないようにだ。
『随分な御挨拶だこと。せっかく可愛い妹がお兄様のためにいい情報を教えに来たというのに』
「用件は手短にな。もうすぐ本番なんだ。変なことに神経を使いたくない」
『釣れないのは昔からそうね。――まあいいわ。じつはね……』
楽屋で佐竹が電話で話している。電話の相手はエクレシア――沙希であった。
それは本番開始三時間前のこと。最終のリハーサルをステージ上で終えた蜃気楼奇術団は各自の楽屋に戻って三十分前まで自由行動していた。
佐竹も一人だけの楽屋で机に置かれてあった週刊誌を手にとって眺めていたところ、着信が来た。画面には知らない電話番号。それでも電話を受け取るのは彼なりの礼儀だ。
『もしもし。博文お兄様ですか?』
その声を聞いた途端、佐竹の眉間のしわと表情が一気に厳しくなった。
相手は近いうち必ず相見えるはずの遺産の相続相手。聖沙希だった。
「何の用だ?それになんで俺の携帯の番号を知っている?」
佐竹は周囲をきょろきょろ見回して、小さな声でしゃべる。他のメンバーやスタッフに気取られないようにだ。
『随分な御挨拶だこと。せっかく可愛い妹がお兄様のためにいい情報を教えに来たというのに』
「用件は手短にな。もうすぐ本番なんだ。変なことに神経を使いたくない」
『釣れないのは昔からそうね。――まあいいわ。じつはね……』