W・ブラッティⅡ

5

 慎次たちの席は前から四列目の左側という中々のポジションだ。前の方で何をやっているか全て分かる。


 ホールは全体で千五百人ほど収容できる広さで一階席と二階席もほぼ黒山で埋め尽くされている。開演前の知り合い同士の雑談で少しうるさいくらいだ。


 最低限付いている間接照明が消えると観客は歓声を上げ始める。いよいよマジックショーが始まる合図だ。


 上から五本のスポットライトがステージに当たる。そこにはまだ誰もいない。しかしライトはその部分を当て続ける。


 その時、何もない部分から人が出てきた。歓声が自然に大きくなる。ステージの中央から出てきたのはリーダーの佐竹宏史。観客席からは黄色い声が何回も飛び交う。それを博文は手を振って応える。


 そこから次々と人が出てくる。サブリーダーの大嶺、一場、有森、そして最後に渡部がステージ上に現れて蜃気楼奇術団が全員揃った。さらに大きな歓声がホールを包んだ。


 大歓声の中蜃気楼奇術団のマジックショーが始まる。
< 50 / 73 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop