W・ブラッティⅡ
 二階席の端っこから二人の少女がステージ中央の佐竹を見つめている。赤と青のリボンカチューシャを付けた二人――エクレシアとカトリカだ。二人は自分の席からでは立ってみないとステージが見えないほど後ろの席だった。


「んもう!どうして私がこんな下等な席にいるのか皆目見当がつきませんわ!」


 エクレシアの怒気は観客の歓声にほとんどかき消されてしまう。唯一分かっているのは隣にいるカトリカだけだ。


「すいません。予想以上にこのマジックショーの人気が高いみたいで、昨日の段階でブローカーから買った席はここしかないのです。熱狂的な地元ファンが多くていい席を転売することが出来なかったのです」


 カトリカの説明を聞いて少しは落ち着くエクレシアだがやはり納得がいかないようだ。


「もしかしたらこのステージ中に博文お兄様が悠介お兄様に挑発してくるかもしれないってのに……」


「こればっかりは我慢してくださいとしか言いようがありませんわ。それに……」


「それに?」


「博文お兄様が悠介お兄様を挑発してくれば争奪戦が出来ると言ったのはお姉さまでは?それにこのホールのどこかに悠介お兄様がいることを教えたのもお姉さまです」


「なに?それは私が悪いって意味かしら?」


 エクレシアが後ろ髪をかきあげる。長く綺麗な金の髪がふわりと優雅に舞った。しかしその手には少しの苛立ちが見える。


「悪いなんて言っていませんわ。ただこの展開に持ち込んだのはお姉さまですからこういう席で二人の事情を見ることになっても文句は言わないで欲しいだけですわ」
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