W・ブラッティⅡ
 今から十年前。


 佐竹が十二歳の頃。


 佐竹は一つの技を身に付けた。否。正確には身に付けられた。
あの忌々しい手術を終えた後から不思議な力が佐竹の体、特に左手を包んだ。
その力に触れた物は道具という生易しい名前を剥奪される。凶器と呼ぶにも凶悪な、まさに人を殺すためだけに生まれたと言っても過言ではない惨殺具と変える。見た目はほとんど変わらないが中身は全く違う別物だ。


 その力で俺は何人の人間を殺しただろう?


 初めは何も知らなかった俺がじゃれついて投げたボールを顔面に受けた友達の顔が吹き飛び、肩から上を無くした死体に変えた。


 その次はスコップだ。今となってはどうでもいい理由で始まった喧嘩。手近にあったスコップで応戦したら体が真っ二つになった。その子は何かを言いながら体を離されすぐに何も言わなくなった。


その後、あの男に話を聞いた瞬間俺は目の前が真っ暗になったことを覚えている。


『そうか。上手くいったようだな。お前にはこの技術で聖の名前を争える人間になるだろう』


「どういうこと?詳しく教えてよ?」


『聖の技術は人を殺すための技術。その技を何のデメリットも無く扱えるのは、立派な血を持った証拠だ。誇るがいいぞ』


 人を殺すための技術?聖の名前を争う?俺はそんなことしたくない。


 元に戻して!


 そうしたらあの男は俺を蔑むような眼で見てきた。睨むでもなく、ただ汚いものを見ているような眼だった。
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