Ｗ・ブラッティⅡ
　麻耶を尻目に佐竹は、話を戻す。と言って話を再開する。


「聖の技術は生まれつきで備わる物ではない。人の手によって後付けされる。大体六歳をメドに技術適応の手術が行われる。」


　悠介は固唾を飲んで佐竹の言葉を待つ。自分もその技術を持っている人間として気にせずにはいられない。


「人にもよるが成功率は四割が良いところだ。一つの体に二つ以上の技術を用いようとすれば確実に体は壊れる。技術の力は人智を凌駕するほどの力を持っている。良くて半身不随、悪ければ死ぬ。これは百五十年程前から分かっている。」


「百五十年……そんな昔から聖は力を支配していたのか……」


　悠介の話に佐竹は首を横に振った。その表情には優越感も悲壮感も感じない、無機質なそれであった。


「聖はもっと昔。それこそキリストが生まれるより遥か昔から技術を引っ下げて大陸から来たのではないかと一部の人間は言うけどな。まあ。その話でさえ眉唾もんだ。今では平安時代半ばから現れたという意見が強い」


「平安中期。今から千年以上も前から聖はあったというのか……」


「そう。しかし聖という名を全国に知らしめたのは戦国時代。銃を日本に伝えたのも聖が作ったものとされている」


　佐竹の話に悠介たちは眉をひそめる。それもそのはず。戦国時代の銃器の伝来は、大航海時代の宗教勢力の拡大のために偶然日本に辿り着いたポルトガル人から教わったと歴史の教科書には載っている。これは佐竹も知っているはずだ。


　しかし、佐竹の口から出てきたのは聖。すかさず麻耶が反論する。


「それはあり得ない筈です。いくら聖が優秀でも昔から世界水準を超える力を持っていたとは思えません。第一その話は本当ですか？私が見た本でもそんなこと書いている本はないです」


「まあ、そうだろうな。これは日本の闇歴史の一つだから、どこにも載っていないと思うぜ。」


　言葉に詰まる麻耶。彼女の表情はどこか不満を含んでいる。しかし、反論できるほどの知識を持ち合わせていないため口には出せない。そこが逆に彼女の不満を一層強める。
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