Ｗ・ブラッティⅡ
「日本統一の裏では聖家がいくつもの功績を残した。例えば桶狭間の逆転劇なんてのは聖家の栄華を誇る代名詞でもある。大将の首を討ったのも聖の人間ってこともな」


　悠介たちは背筋に凍りつくものを感じた。果たして日本で起きた史実のうち、聖が関わっているのはどれほどなのだろうか。


　今では聖は日本を裏で支えるほどになったと佐竹は言った。悠介たちの知っている史実は聖という黒墨で塗りつぶされていく。


「さて、歴史のお勉強はここまでにして、悠介」


　そう言うと佐竹は左腰に刺してある刀を鞘ごと抜いて悠介の前の方に投げた。ガチャンという無機質な音が三人しかいないホールに大きすぎるくらい響いた。


「ぼちぼち本題と行こうか。お前が気にしている聖悠介の正体を」


　悠介の顔が一層険しくなったのが分かる。思わず麻耶も顔を強張らせる。


「知っているのか？俺の正体が」


「そりゃあ。一応俺の技術の後継者としてお前がいるんだから。最低限のことくらいは聞いている」


「技術の後継者？どういう意味です？」


　麻耶が聞いてくる。麻耶が聞いてくるのは初めてその言葉を聞く人間が誰もが疑問を抱くことばかりである。


「聖の技術は生まれてから手術をして体に技術の力を入れ込む。それは分かっただろう。ではその人間が死んだらどうなるか？――答えは簡単。技術を取り除いてから処分する。この前死んだ鉄斎なんかはいい例だろう。誰が殺したかは知らないが、会社の中にはそいつの血痕だかしか残っていなかった。それは聖が介入した後だろう。彼の中にある技術を引き抜くために」


「目的は？そもそもどうして聖の技術は今も使われているのですか？これらは全て武力のためにあるだけでしょう？」


「正論だねえ。俺はその正論主義者は嫌いではないんだけど……少し違うんだよ」


　違う？麻耶は佐竹を睨み続ける。
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