W・ブラッティⅡ
「日本は何故核を作ろうとしない?他の国では武力のために核兵器を保有し、増やし続ける?」


 二人は首を傾げる。なぜ聖の話をしているのに、日本の核の話をしてくるのか。しかし、質問した麻耶は答える。


「それは、日本は核爆弾の被害を被っているからでしょう。原子力発電でも文句を言う団体がいるくらいですもの。核兵器なんて作った日には暴動が起きるでしょうね」


「では。聖の力が核の力を上回るなら?言ったはずだ。聖は日本の裏を支え続けてきたと。日本が核兵器を持たずに核保有国と対等に渡り合えるのはひとえに聖が大きく関わっている」


 少しだけの沈黙が数分のように長く感じる。佐竹は単に歴史の傍観者ではなくまるで聖の歴史を生き続けたかのような貫録さえ感じる。悠介が自ら佐竹に対し口を開いた。


「そろそろ聞かせてくれよ。俺の正体を。いい加減じらされるのは嫌いでね」


 その言葉を聞いた佐竹は一瞬驚いた表情をしたがすぐに笑みが浮かんだ。


「そうだな。まだまだ話してやりたいことが多いが、時間はそれを許しちゃくれねえ。さっさと話すか」


「事はもう十三年近くまで遡るか。誰が拾ってきたか知らない子供を突然鉄斎のやつが
『三年後、技術を受け入れる手術を行う』と言いだした。一同は猛反対。聖の技術は本家といえども全てあるわけではない。そんな貴重な遺産を聖の血を引かない人間に使いこなせるわけがない。誰もが分かりきったことだ」


「しかし、手術は成功してしまった……。」


 麻耶がそう言うと佐竹は溜め息をついて、


「せっかちなお嬢様だ。だが、そうだ。その子供は技術の力を身に付けたのだ。」


 そこで数秒、佐竹は間を置いた。焦らしているのか、どうなのかは分からないがすぐに話を始める。
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