W・ブラッティⅡ
「名前は『血の開放』。鉄斎は『血の因子』と呼んでいたが、『因子』は前の技術でな。


『解放』と名を改めた。しかし、強大すぎる力には必ず副作用というものが存在する。その子供も例に漏れず副作用を起こしてしまった。」


「副作用?意外と現実的なんだな。日本を容易く滅ぼす力の代わりに副作用なんて。今どきの抗生物質ですら副作用なんて無くなったのに」


「技術をそこらへんの医療の薬と一緒にするな。――まあいい。『血の開放』はその強大な力を供出するには全身を漲る血の流れを速めて力に変える。興奮するのと同じ原理なわけだ。技術はその流れの速さを常人の何十倍の速度で流れるように出来た。しかし、それほどの力を人間の体で行えるか?答えは出来ない。そんなことをすれば確実に人間は死ぬ。それをあの男は意外な方法で解決した。」


 いよいよ核心に迫る。二人は佐竹をから一瞬も目を離さないようにしている。そして彼の口が開いた。


「それは、新人格の形成だ。強大な力を得る代わりに防衛機能として違う人格に変えてやることで力を最小限にまで抑えることが出来る仕組みだ。その効果によりその子供は最初こそは感情の暴走で幾度となく攻撃的な人格を取っては力を暴走させていたが、年を取るにつれ落ち着きを見せ、暴走もほとんどなくなった。もっとも、六歳になった時点でそんな記憶、本人は覚えていないがな」


 その言葉に麻耶は反応した。佐竹の言いたいことが分かったからだ。


「まさか……。その子供は……」


 気づいてしまったという顔をする麻耶を見る佐竹は、表情こそ変えないが少しだけ口元を緩めた。


「その子供は誰か?お譲様はお分かりのようだ。そう……」


 そして左腕を伸ばし、人差し指を指す。


 その先にいたのは悠介だった。
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