W・ブラッティⅡ
「さすがは進化した技術だ。俺の旧型ではとてもじゃないが凌ぎきれない」


「旧型?どういう意味だ?」


「元々お前の『血の開放』は俺の技術『血の因子』の進化系で、『解放』は別人格を燃料にして力を増大させるが、俺の『因子』は自分の気力を燃料にして力を増大させる。どっちが長持ちするか分かるだろう?」


 佐竹は肩で息をしていた。どうやら気力の限界が近いようだ。


「だから俺は局地的にしか力を増大させねえ。気力を出来る限り食わねえようにするためさ」


 そこまで言うと佐竹は刀を鞘にしまう。悠介は目を細める。


「これで終わりにしよう。このままでは俺がジリ貧で負けるからな」


 佐竹の目的は居合い。しびれを切らし向かってくる相手に対し洞察力と瞬発力を増大させ、相手に一太刀を浴びせ勝負を決める。悠介はそう読んだ。


 悠介はすぐに佐竹目がけ突っ込む。距離が一気に縮む。五メートル、三メートル、二メートル。


 佐竹が刀を抜いた瞬間。前には誰もいなかった。いるはずの悠介の姿は無く。誰もいない。


「!」


 気づいた時には遅かった。悠介は後ろに回り込んで首に柄を当てて気絶させた。


 倒れ行く様を見つめていた悠介は、


「悪く思うなよ。殺したら慎次がうるさいからな」


 そう言って悠介もばたりと佐竹の隣に倒れ込んだ。見ていた麻耶はすぐに倒れた二人の元に駆け寄る。


 悠介の方はおそらく力を使いすぎて気を失っただけ。一方の佐竹は首に痣を残して倒れている。おそらく大事には至らないだろう。


 二人が無事なのを知って麻耶は安堵のため息を漏らす。佐竹の体をゆっくりステージの上の戻した時、


「?」


 一枚の白い紙が麻耶の目の前に現れた。佐竹のスーツの中から出たのであろう紙を麻耶は拾って目を通した。


「これって……!」


 紙を持つ手が震える。その紙に書かれていたことはこの前悠介が倒した相手、聖鉄斎の持つ技術と聖の当主をめぐる争いについてだった。
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