エボリューションマン -英雄たちの峡谷-
「へー、スゲーや、UFOが透けている・・・・・・まるで巨大な生物体だ!?・・・・・・」
誰もが、そう思った。
そして遠くの方では、好奇心や興味を持った若者が数人、ビル内から出て来てそう言った。
今では、危険とされる路上が見物客の溜まり場と成っていた。

「ちょっと御免なさいね。 あ〜あ〜、すみません」
若者ばかりが集まっている中 右に杖をつき、腰を曲げたお年寄りが、中程から一番前に出て来た。
止まり、やや腰を伸ばし、顔を上げた。

「お〜おっ、恐い恐い」
そう言って両目をつむって両手を合わせたのだった。

「お爺ちゃん、そこ危ないよっ、こっちに来てなよ」
みんなが、そう感じお爺ちゃんを見ていたのだった。
視線を独占する。
「お〜いっ、お爺ちゃん。何だ耳遠くて聞こえないのか〜!?」「 いいや、ジジィは、先が短いんだから、放って置けばいいんだ、今が楽に死に時かもな〜」「俺達も先行き判らない身だからな〜、早くあっちに行っちゃいなっ、心配して損したぜっ」
語気を荒げて唾を吐いた。

爺さんは、目を開き、頭を上げ、両手を下ろした。 後ろを向いて若者方に頭を下げた。
 右頬の前から口の前まで空中にマイクが現れる。
「それじゃ〜、そろそろ行くとするか〜」
前に両腕を伸ばし、にぎり、腰が浮き!? 足が浮いた!?。

ウィーン、ビーン、シュッシュルー、あっ、という間に卵・幼虫・成虫、体とバイク!?が一体化したカタツムリ型スケルトンマシーンといった感じのバイクが若者達の目の前に現れていた。
「スッ、スゲー・・・」
「・・・・・・」
「ワッ、ワオ〜・・・・・・カッ、格好いい〜、小さなシンデレラカー(かぼちゃ車)かっ!?」

ぷぁプアアァ〜、とクラクション鳴らして光と排気音とタイヤの摩擦跡を残して疾走して行った。
豪風を若者に吹き掛ける。

ヘッドライトの光だけが荒れ崩れた地面を駆けるバイクの行方を教えてくれていた。
雷みたいにあり得ない鋭角に凄い早さで疾走して行く。
また変貌した。 紙のような薄さに成り、空気抵抗を無くした。 更に早く更に鋭角に曲線に成って疾走して行く。 全く有り得ない床体操風のリボン状の軌跡を残して行く。
< 7 / 14 >

この作品をシェア

pagetop