◇◆センセイは俺の!◆◇



「ばか…信号無視ってなんだよ、クソッ…」



やっぱ1人になるんじゃなかった。



孝兄と瞳の病室にいれば良かった。



かっこ悪いけど…涙が出てくる。



腹が立つ。



信号無視しやがった運転手にも、



守ってやれなかった自分にも…。



周りの患者さん達に気づかれないように、上を向いていた。



今にもこぼれそうなくらい涙はたまっていた。



すると、その時だった。



「いい天気ね…。」



不意に優しい声でそう話しかけられて、何気なく涙を服の袖で拭いながら、声のした方をみた。



「あ…」



びっくりして声が出ない。


そんな俺に、あの人とどこか似たふんわりした笑みを向けるその人。



「こんにちわ、角くん。…覚えてる?」



「は、はい。みー…中川先生の…。」



俺が慌ててそう答えると、その人はみーちゃんそっくりの笑顔になった。



一度しか会ったことのない俺を覚えていてくれた、みーちゃんのお母さん。






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