◇◆センセイは俺の!◆◇
――――――・・・
「コーヒーを2つ。」
須藤を呼び止めた俺は、須藤の車でタロウさんの店にきていた。
思わぬ人物と現れた俺に、一瞬は驚いていたタロウさんも「ごゆっくり」とコーヒーを出してまたカウンターへと帰っていった。
須藤はブラックでコーヒーをひと口啜る。
それを黙って目で追いながら、ドクドクと脈打つ自分の心臓に焦っていた。
なんで呼び止めちまったんだよ俺…
いや、でもクリスマスのこと礼言わなきゃなんねーと思ったから…
てか何からどう切り出しゃいいんだぁ!?
「ここは美波とよく来たのか?」
「は?…あ、いや。一度だけ。」
「そうか。」
突然聞かれて焦ったけど、すぐにそう答えた。
ここには一度、
美波先生の誕生日に連れてきただけ。
先生の誕生パーティーをした。
まっ、最後はあんたに邪魔されて終わったけどな。
「なかなか旨いコーヒーを出す店だな。」
え?
見ると須藤は満足そうにコーヒーを片手に俺に言った。
あれ?なんだ?
前みたいに嫌みかよ!みたいなイライラ感がしない。
てか、須藤の俺にむける表情がどこか優しく…嫌みな感じが全くない。
それから俺は穏やかな心持ちで、口を開いた。
「あの…クリスマスの夜のこと、聞きました。…ありがとうございました。」