◇◆センセイは俺の!◆◇
「俺、須藤はまじで先生のこと大事に想ってると思ったから…先生に幸せになって欲しかったから…身を引いた。」
抑えられなくなった感情が勝手にこぼれていく。
みーちゃんはそれを黙ったまま聞いていた。
「だけど、須藤はマキさんを選んだ。これじゃ…先生が可哀想だし。」
「私は全然、悲しくなんかないわよ?」
「え?」
みーちゃんは笑っていた。
いつもの優しい笑顔。
みーちゃんはそっと立ち上がると、俺の横へ座った。
「私はもう誠さんのことは何とも思ってないわ。逆に喜んでるくらいよ。昔の誠さんに戻って…」
みーちゃんは話してくれた、初めて会ったときの須藤の印象を。
紳士的で優しくて、頼りがいがあって…
そんな須藤だった。
でも、だんだんと変わってしまった…
仕事中心で、女性関係はだらしなくて、束縛するようで無関心。
例のいけ好かない須藤の出来上がりって訳だ。
でも、みーちゃんはそれでも須藤の婚約者でいた。
「なんとなく気づいたの。ずっと忘れられない人がいるみたいだって。」
きっとみーちゃんは、自分がいなくなったら須藤がこのままもっと独りで突っ走ってしまう…だから側にいようと思ったんだ。
本当のところはどうか分からないけど、もう聞かなくていいや。