恋文〜先生へ綴る想い
「着きました…!」
額の汗を拭いながら、私は歩くスピードを落とした。
振り向くと、しゅーた先生は私から数歩離れたところで、膝を曲げながらぜーぜー言っていた。
「最近運動不足だったから、久々に走るとやっぱ疲れるな…」
先生は近くにあったベンチに腰を掛けた。
「先生、ここが“天竺”です。ほら…、ね…?」
私も先生の隣に腰掛けると、川辺と遊歩道の間に立っている欄干を指差した。
そこにはソンゴクウとチョハッカイとサゴジョウと馬に乗ったお坊さんの絵が模様のように描かれている。
「なんだ…、天竺って、孫悟空が目指した場所のことか…」
先生はズボンのポケットからハンカチを取り出すと、そそくさと汗を拭き始めた。
「はい。…って、ホントはこの辺りの住所が“天竺”っていうだけなんですけど、そのせいか、ここにはこんな絵が描かれているんです」
「へー」
私の説明に、先生は感心したようにうなずいた。