恋文〜先生へ綴る想い

先生は台本と楽譜を手に取ると、


「何だよ…、これ、ESSの台本だろ…?なんでカスが持ってるんだ…?」と私に訊いた。



「それが…、私、実はこの度ESSに入ることにしまして、そしたらいきなり文化祭でやる劇に出ることになったんです…」



そう返すと、



「英語のできないお前がなんでESSなんかに入るんだ?」



先生はいぶかしそうに私を見た。



「それがその…、何か急に英語が勉強したくなりまして…」



苦笑いする私に、



「そっか…。それじゃ仕方ないな…」



先生は私に来客用のソファに腰掛けるよう促し、台本と楽譜に書かれてある英語をひととおり音読してくれた。



私はそれを聞こえたとおりに、ひたすらカタカナでメモしていった。



先生があまりにも流暢に読むので、途中「すみません、もう1回お願いします」と何度言ったことか…。



その度に先生は顔をゆがめたけど、私のためにわざわざカタカナ発音で読み直してくれたのだった。
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