恋文〜先生へ綴る想い

車は少し走ると、近くの海岸で停まった。



「降りて」



先生に言われてドアを開けると、心地よい潮風が頬を撫でた。



海水浴シーズンはとっくに終わっていて、人もまばらだったけど、それはそれで都合がよかった。



「なんだ、先生の好きな場所も、水のあるところだったんですね」



3歩前を歩いていた先生に声をかけると、



「ああ。夏休みにはお前の好きな場所に案内してもらっただろ…?だから今日は俺の好きな場所に連れて来てやろうかなと思ってさ」



先生の背中がそう答えた。



「へー」



先生の言葉はちょっとくすぐったかった。



「私の好きな場所が川で、先生の好きな場所が海だなんて、私達ってやっぱり気が合いますね」



自然と顔がほころんでしまう。



「あー、そうかー?」


「そうですよ。誕生日も同じだし、ラズが好きだってのも同じだし」


「あー、そう言われればそうかもな…」
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