小悪魔男子



真希の家に急いで行くと


家の前には髪も顔もボロボロでやつれた様子の女性がいた。



この人が…


「先生の…奥さん…?」



あたしの声でゆっくりとこちらを向く。




「あなたが "真希"ね……」


「え?」



勘違いしてる?


「あの、あたしは…」


「あなたのせいでどれだけ苦しんでるか分かる?

…あの人をどうやってたぶらかした?

返してよ…

私の夫よ…


……黙ってないで何とか言いなさいよッ!!!!」



「あたしは…」


ジリジリと迫って来る。その顔は鬼の様で


とても恐ろしかった。




「何も言えないのね?


いいわ。




私の為に死んで頂戴」




彼女がハンドバックから出したのは

包丁だった。



「あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛あ゛あ゛――――!!!!」


狂った様に叫び、あたし目掛けて刃物を突き刺す―――



「さなちゃん!危ない!」


ドンッ!



「え…」


一瞬のうちに

大和が私と彼女の前に入って両手を広げている。



「さな…?」


先生の奥さんはその時になって初めてあたしが真希じゃないと気付いた



が―――――





もう遅かった。




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