小悪魔男子
「こんな日が来るんじゃないかって、分ってた。
たった2ヶ月もしない関係だったけど…それだけは覚悟してたつもり。
でも、振られるのは嫌なの。
センセ、あたしから振らせてね」
「真希…」
「今までありがとうございました。あたしと、別れてください」
真希は泣かなかった。涙の代わりに見せたのが笑顔
あたしはそれを見て泣いてしまった。
その笑顔は、真希がどれだけ先生を好きかを表していたんだ…。
泣かないのは
先生の中に真希という存在を残さないため。
未練や好きと言う感情を抱えたまま奥さんの側に居ることはまた、新たな嫉妬を生み出すに違いないんだ。
綺麗に別れることができない二人だから、せめて最後くらいは笑顔で居たいんだろう。
「バイバイ、神楽先生」
立ち上がった真希は、そう言い残して病室を出て行ってしまった。
「真希!!」
後を追おうとあたしも立ち上がりかけた時、大和のお母さんが静止した。
「彼女も色んな覚悟があって先生と付き合ってきたんでしょうね。
だから…別れた事にきちんと向き合って、新しい道を歩む覚悟をしなくちゃならないわ。
それは一人になって初めてできることよ?
友達に慰めてもらうばかりじゃ、道は見えてこない。
自分で考えて、初めて覚悟ができる場合もあるんだから。
彼女にはきっとその方がいいわ。…私と似てるもの…」