小悪魔男子
あたしの存在に気付いた二人はピタリと動かなくなり
顔だけをこちらに向ける。
「――あら、何しに来たの?」
顔にかかる前髪を手で掻き上げる様にして耳にかける華耶さんの姿は
まさに"卑猥"で
心臓が嫌な音を立てて波を打つ。
「さ…な…!」
驚く大和の声がするけど
まともに顔が見えない。
…いや、涙で視界がぼやけているんだ。
「大和の馬鹿っ」
蚊のなくような声でそう言うのが精一杯で
あたしはまた家を飛び出した。
こんな事なら、みんなに居てもらえば良かった…!!
独りじゃ 何考えていいか分からないよぉ…
泣き顔のままじゃ家にも入れず
庭の影に隠れるようにして入り込んだ。
「ッぅ―――――!!!!」
声を殺して、泣く。
大和…
あたしを好きじゃなかったの?
付き合ってるんだよね?
もう、自分の気持ちさえ分からなくなってきた。
辛い…
辛すぎるよ…