小悪魔男子
大人になれば
失った物も返ってくるんじゃないかと思ったんだ。
だから 俺は
さなちゃんの前でしか笑わない。
自分の全てを見せるのは彼女の前だけで良い。
そう決めたんだ。
表情を変えない事が大人なんだと信じていた。
そして夏休みも明け、学校が始まる。
この日をどんなに待ち望んでいた事か。
少しでも早く家から遠ざかりたくて、毎日7時に家を出た。
勿論、一番に教室に着く。
暇だったけど、家に居るよりマシだった。
土日は、華耶も休みだったけれど
顔を合わせない為に、同級生の誰かの家に 朝からお邪魔して
華耶がいつも出掛ける6時に家に帰ってきていた。
けど
それももう疲れてきて
もう、どうでもいい と思うようになってきた ある日の事だった。
「大和。学校祭に来なさい」
「…何で」
休みのクセに、珍しく家に居る華耶にそう言われた。