小悪魔男子
「それだけだ」と、俺に背を向けて歩き出す和樹。
「…もう一つだけ。助言してもらってもいいか?」
癪だけど と先ほどの彼のセリフを借りてみる。
振り向いた奴の顔は実にさわやかな笑顔で。
「良いけど、貸し な」
と憎たらしく口角を上げるのを見ても嫌味に聞こえないほどだった。
「さなちゃんがもう 俺の事なんて好きじゃなくても
振られた方が ”男らしい” んだよな?」
和樹は一瞬大きく目を見開いて、ぱちくり とさせた後、呆れたように笑った。
…なんだよ。せっかく不安をさらけ出して質問してみたのに。傷心の小学生をバカにしてるのか?
「どーせ、言わずにはいられないんだろ?下らない質問すんじゃねーよ」
そしてまた後ろを振り向く。
見えないのをいい事に、奴の背中に向かって中指を立ててみる。
「…ひとついい事を教えてやる」
歩み出さずにまた振り返ったのに驚き、慌てて手を引っ込めた。