小悪魔男子
礼儀よく挨拶をして、僕たちは隣りへ向かったんだけど…
「大和君、あれ だれ?」
さなちゃんが指をさしたのは、玄関に這いつくばるようにして、郵便受けから家の中を探っている男だった。
何をしているのかは分からなかったけど、幼い僕にも変な人なんだってことぐらいわかる。
「おぢさん、何してるの?僕のうちに何か用?」
そう声をかけたとたん、男の体はびくっとし、すぐに立ち上がった。
こちらをゆっくりと振り向いたその顔の気持ち悪さは一生忘れないと思う。
「…ぼくたち、ここの子?」
ガマガエルのような笑顔。
怖くなった僕はとっさにさなちゃんの後ろに隠れる。
「…あたしは隣りだけど、この子はそうだよ」
さなちゃんは、震えながらそう答えた。
「そう…。
あのね、おぢさん、ちょっとお家を間違えたみたい。
今日見たことは誰にも言っちゃだめだよ?約束だよ?」
ズイッと顔を近づけてきた。
黄ばんでところどころ抜けた歯と、ギドギドの髪の毛が悪臭を放っている。
怖くて、僕たちは何にも言わずに一つ頷く。
満足そうに、男は立ち去る………が、突然振り向き
こう言い残した。