振り返る日々
次の機会は夏休み中に訪れた。
塚田君のクラスメートがライブをするのに私と順子が誘われたのだ。
ライブハウスは姫路でも有名な「マッシュルーム」。
到着すると、入り口にタムロしている人々の中に、藤田先輩を見つけた。
私の胸が激しく打ち始めた。
藤田先輩は塚田君の姿に気付いたらしく手を上げながらこちらに近付いてきた。
彼が近付いてくると共に…私は自分が今見ている光景が夢であって欲しいと願わずにはいられなかった。
先輩は、首にアクセサリーらしきものをしていた。
それをアクセサリーと呼んで良いのであれば。
手芸店なんかで売っているジッパーを、三分の一だけ閉めて輪っか状にして、首からかぶっていたのだ。
いくらパンクファッションが流行ってて、チェーンを首に巻いたり、Tシャツに安全ピンを止めてる人が多いとは言え、ジッパーを単体でアクセサリーにするなんて
オシャレ上級者でも至難の技。
順子はすでに横を向いて笑いを堪えている。
塚田君と挨拶を交わす先輩を、涙を堪えてマジマジと見ていると、塚田君が
「あ、藤田先輩、こいつ山田玉緒。高校からのツレっす。」
え〜…。もう紹介とかいらんし…。
藤田先輩がクルッとこっちを向いた。ジッパーその勢いでクルンと一周した。
順子が無理矢理咳こんで、吹きだしそうになるのを堪えていた。
「おぅ、玉緒ちゃんか。俺、藤田哲司。よろしくね。」
と右手を差し出してくる藤田先輩。
「あ、はじめまして…」
無理矢理笑顔を作って握り返した。
それにしても、藤田先輩、やけに唇が赤い。瞼もなんだか血管浮いているのか青く見える。
「じゃ、俺約束あるから。」
そう言って立ち去った先輩の小さくなる背中を見つめながら塚田君がボソッと呟いた。
「なぁ…藤田先輩…化粧してなかったか…?」
順子がたまらず大爆笑し始めた。
私の大学生活初めての恋は、あっという間に終わりを告げた。
塚田君のクラスメートがライブをするのに私と順子が誘われたのだ。
ライブハウスは姫路でも有名な「マッシュルーム」。
到着すると、入り口にタムロしている人々の中に、藤田先輩を見つけた。
私の胸が激しく打ち始めた。
藤田先輩は塚田君の姿に気付いたらしく手を上げながらこちらに近付いてきた。
彼が近付いてくると共に…私は自分が今見ている光景が夢であって欲しいと願わずにはいられなかった。
先輩は、首にアクセサリーらしきものをしていた。
それをアクセサリーと呼んで良いのであれば。
手芸店なんかで売っているジッパーを、三分の一だけ閉めて輪っか状にして、首からかぶっていたのだ。
いくらパンクファッションが流行ってて、チェーンを首に巻いたり、Tシャツに安全ピンを止めてる人が多いとは言え、ジッパーを単体でアクセサリーにするなんて
オシャレ上級者でも至難の技。
順子はすでに横を向いて笑いを堪えている。
塚田君と挨拶を交わす先輩を、涙を堪えてマジマジと見ていると、塚田君が
「あ、藤田先輩、こいつ山田玉緒。高校からのツレっす。」
え〜…。もう紹介とかいらんし…。
藤田先輩がクルッとこっちを向いた。ジッパーその勢いでクルンと一周した。
順子が無理矢理咳こんで、吹きだしそうになるのを堪えていた。
「おぅ、玉緒ちゃんか。俺、藤田哲司。よろしくね。」
と右手を差し出してくる藤田先輩。
「あ、はじめまして…」
無理矢理笑顔を作って握り返した。
それにしても、藤田先輩、やけに唇が赤い。瞼もなんだか血管浮いているのか青く見える。
「じゃ、俺約束あるから。」
そう言って立ち去った先輩の小さくなる背中を見つめながら塚田君がボソッと呟いた。
「なぁ…藤田先輩…化粧してなかったか…?」
順子がたまらず大爆笑し始めた。
私の大学生活初めての恋は、あっという間に終わりを告げた。