薔薇姫-another story-
「レーオ!お早う!」
「鬱陶しい」
挨拶の抱擁をしようと両手を広げた俺に、レオはそう言い放った。
どうやら不機嫌らしく、眉間に皺が刻まれ、瞳が近寄んなと言っている。
けど、息子に怯むわけにもいかない。
俺は構わず話を続けた。
「お前、そんな顔してると幸せが逃げてくぞ?」
「余計なお世話だ」
「魔王は常に、冷静さと気品を兼ね備え…」
「わかったから、さっさとどっか行け」
…ほら、な?
これが愛情たっぷりに育ててやった父親への態度だ。
昔は、いつでもどこでも俺のあとをついてきたくせに。
だから俺は、息子が恥じらうことのない、貴族らしい立派な魔王になろう、と心に誓ったんだ。
幼い頃の尊敬の眼差しが、今や汚いものを見る目に変わってる。
…父さんは悲しい。
「レオ、メイちゃんの前でもそんな顔してるのか?」
レオの肩が、ぴくりと動く。