薔薇姫-another story-
そんなレオの素直な反応に、俺は心の中で苦笑した。
…何で心の中かって?
表に出したら、レオにしばらく口利いてもらえなくなるからな。
「…ほっとけ」
レオはそう言うと、あからさまに俺に背を向けた。
全く、困った息子だ。
けど、そんな息子に良い影響を与えたのは―――…
「レオ―――?」
彼女の声は、凛と廊下に木霊する。
レオはその声にピクリと反応すると、振り返り、俺のさらに後方を見た。
彼女の姿を確認すると、レオの表情が和らいだ。
「メイ」
愛おしそうに、彼女の名前を呼ぶ。
そんな息子の姿を、俺は羨ましく思った。
レオに良い影響を与えたのは、一人の人間の少女。
それも、俺たち貴族を一時期絶望へ追いやった…薔薇姫の子。
結ばれてはいけない。
そんな二人が惹かれ合ったのは、運命だったのかもしれない。