薔薇姫-another story-
どこまでも堕ちてゆく自分を、最初は何とも思わなかった。
ただ、後から沸き上がってきたのは…どうしようもない悲しみと、怒りだった。
何がいけなかった?
どこから間違った?
…兄貴が彼女に出逢ってから。
彼女に出逢わなければ…こんな苦しみを味わうことはなかった。
―――彼女が、薔薇姫が魔界に現れなければよかったんだ。
どうしても兄貴を憎めなかった俺は、全ての責任を薔薇姫に押し付けた。
その方が何よりも楽だった。
…それが間違いだと、心の奥底では気づいていながら。
俺は貴族を復興させるため、魔王になることを決意した。
とことん努力をして、地から這い上がっていった。
俺が魔王の地位を得た頃、既に二人の息子がいた。
こいつらには、俺みたいな思いをして欲しくないと本気で思った。
…けど、それは難しくて。
俺が魔王になったからといって、風当たりが完全に弱まったわけでもなかった。