線香花火 ** 夕恋独白
懐かしい夢を見た。

初めて君に会った時のこと。

君を見つけたのは、ごった返した週末の繁華街。

飲めもしない酒を無理矢理煽って、うずくまってた小さな身体。

思わず触れてしまったのは、昔飼ってたペットに似ていたからだ。

まるで捨て猫みたいだった。

そう、ホントにその例えはぴったりだ。

拾った以上、責任を負うのは当然だ、が。

君はホントに無茶苦茶な人だった。

僕はいつだって振り回されてばかりで。

けれど、一度も怒ることができなかった。

何かに相当我慢していたのか、君は酷く疲れて見えたから。

守ってやらねばと、勝手に思い込んでしまった。

それが、いつしか君の足枷になるなんて考えもせずに・・、浅はかで愚かな自分に無償に腹が立った。

先日、偶然会った君の友達から、真実を聞いた時、正直息が止まりそうだった。

僕は、君の何を見ていたのだろう。

僕との暮らしが幸せだと言った君。

何にもなかったその両手に、他にも大事なものが増えていたのに、何一つ気付いてやれなかった。

もしも、あの頃の自分に会えるなら、一発殴りたい。

いつまでも子供だと決め付けて、未来は当たり前のように一緒なのだと信じていた。

君が何も言わなかったのは、僕のせいだ。

愛情と、自分の可能性と。

異なる未来の間で、君はどれほど悩んだろう?

相談しようと、思いを告げる時を、どれほど探しただろう。

無心に仕事する僕の後ろで。

振り返るたび、返してくれた笑顔を思い出し、グッと唇を噛み締めた。

分からなくなったのは、君自身の気持ちだったんだな。

悩んで、袋小路に入り込んで、疲れて。

あの花火は、君の掛けだったのか、決意だったのか。

きっとあの日、君は違う未来を、選んだんだ。

僕への気持ちに、区切りをつけて。

歩きだすことを。

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